8.名誉毀損等の損害賠償請求事件
| 1 商業主義に流されがちな新聞、雑誌やテレビなどのマスメディアに加え、近年インターネットが私人の表現行為としても普及したことから、公然事実を摘示して、人の人格的価値について社会から受ける評価である名誉を毀損する行為や、自己に関する情報をコントロールする権利であるプライバシー権の侵害行為、半ば隠し撮りに近い肖像権侵害などの行為が数多く発生する時代となりました。そのような場合、名誉等を侵害された被害者は、精神的損害を受けるのみならず、仕事や友人関係なども失うだけの多大な実害を被るにもかかわらず、マスコミ等が自主的に謝罪広告を掲載したり、損害賠償金を支払うなどして名誉回復を図る例はほとんどありません。 |
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2 その場合、被害者としては、裁判所に対して、名誉毀損等による損害賠償請求(民709条、710条)を求める訴訟を提起せざるを得ません。この場合、損害賠償に代えてまたは損害賠償請求とともに名誉を回復するための適当な処分としての謝罪広告の掲載を求めることもできます(民723条)。 |
| 3 この場合にまず問題となるのが、当該表現行為によって被害者の社会的評価が低下したことの主張、立証です。最近は表現行為も巧妙なものとなり、全体としてみれば名誉毀損が明らかであっても、個々の文章を見ただけでは一見して社会的評価の低下にあたるかどうか難しいことも多いと言えます。また、テレビ番組の場合には被害者の手許に当該番組の資料(録画テープ)がなく、証拠保全手続を取らなければならない場合もあります。 |
| 4 他方、当該表現が名誉毀損に当たる場合であっても、表現の自由との調整の観点から、その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは右行為には違法性がなく不法行為は成立しませんし、事実が真実であることが証明されなくてもその行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がないとして不法行為が成立しないとされております(最判昭和41年6月23日)。 したがって、裁判においては、右違法性ないし責任阻却事由についても問題となることが多く、当該表現をなすについてのマスコミ側の取材活動や資料が充分であったかが争われることとなります。 |
| 5 実務上、通常の名誉毀損事件に要する期間は、証拠調の内容にもよりますが第一審判決言渡しまでに1、2年かかる場合もありますし、勝訴した場合の慰謝料額もわが国では100万円程度から、著名人等の場合多くても500万円程度と、被害者にとっては必ずしも保護が十分でないと言わざるをえない現状です。 |