4.税務訴訟事件、国税犯則事件
| 1.税務訴訟事件 所得税、法人税、相続税などの国税で、申告納税方式によるものについては、納税者の提出する納税申告書によって納付すべき税額が確定することになります。納税申告には、期限内申告、期限後申告及び修正申告の3種類があります。納税者は、国税に関する法律の定めるところにより、課税標準等及び税額等を記載した納税申告書を、法廷申告期限までに税務署長に提出しなければならないとされており、この納税申告書を期限内申告書といいます(国税通則法17条)。申告書の提出期限を経過した後も、税務署長の決定があるまでは、いつでも納税申告書を提出することができ、この納税申告書を期限後申告書といいます(国税通則法18条)。納税申告書提出後、申告税額が過少であるときは、税務署長の更正があるまでは、いつでも課税標準等又は税額等を修正する納税申告書を提出することができ、この納税申告書を修正申告書といいます(国税通則法19条)。なお、税額が過大である場合は修正申告が出来ず、この場合は更生の請求を行う必要があります(国税通則法23条) 納税者の申告に誤りがある場合又は申告がなされない場合には、国税通則法24条、25条の規定により、税務署長は自己の調査した結果に基づいて納付すべき税額を確定することができることとされています。 納税申告書の提出があった場合に、それに記載された課税標準等又は税額等の計算が誤っていたり、それが国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準又は税額等がその調査(所得税法、法人税法、相続税法等には、税務調査を行う場合の質問検査権についての規定が設けられております(所得税法234条、法人税法153条〜156条、相続税法60条))したところと異なるときに、課税標準等又は税額等を更正する場合を「更正」、納税申告書を提出する義務があると認められる場合にこれを提出しなかった者について、課税標準等又は税額等を決定する場合を「決定」といいます。更正には、納付すべき税額を増加させる増額更正と、反対に減少させる減額更正がありますが、訴訟で争いになるのは主に増額更正の場合であります。 次に、確定した国税については、徴収権者である国が滞納者の意思にかかわりなく、国税債権を強制的に実現する手続を執ることができますが、この強制手段を執ることを「滞納処分」といい、「差押え」「換価」「配当」「交付要求」などの処分手続がこれに含まれます(国税徴収法47条以下)。 このように、納税義務者である国民は、国から更正処分、決定処分を受けたり、滞納処分を受けることがあります。 このような、更正処分等に不当、違法な要素があっても、これに不服がある者は、民事訴訟のように直ちに裁判所に訴えて訴訟を提起できるわけではありません。 法は、不服申立て前置主義を採用し、異議申立て、審査請求を経て、はじめて訴訟を提起することができるものとしています(国税通則法115条)。 例えば、税務署長が、所得税、法人税、相続税などに関して、更正処分をした場合には、原則として、2ヶ月以内に、税務署長に対して異議申立てをなし、これに対する異議決定がなされた後1ヶ月以内に国税不服審判所長に対して、審査請求を行うことを要します(国税通則法75条)。これに対し、国税不服審判所長は、審査請求に対する裁決を行うことになりますが、原則として訴訟提起は裁決後に行わなければならないとされています。但し、いつまでたっても裁決しないような場合の救済制度として、審査請求後3ヶ月を経過しても裁決がない場合や緊急の場合には、裁判所に、処分取消の行政訴訟を提起することができるものとされています。 国税不服審判所の裁決があった場合、処分取消を求める行政訴訟は、裁決があったことを知った日から3ヶ月以内に提起する必要があります(行政事件訴訟法14条)。この場合の期間計算については、初日不算入の民法の原則規定(民法140条本文)は適用されず、知った日の当日から期間計算されますので、注意を要します。 次に、課税処分取消訴訟における立証責任の分配については、通説的な見解では、課税処分の根拠規定の主要事実については、被告課税庁に、権利障害ないし消滅規定については、原告納税者に立証責任があるとされております。従って、例えば、課税の根拠たる課税標準である所得については、課税庁に立証責任があるということになります。しかし、事業所得については、その年中の事業所得にかかる総収入金額から必要経費を控除した金額が事業所得の金額ということになりますので、必要経費は課税庁がその不存在についての立証責任を負うのが原則でありますが、必要経費の支出は納税者が行うもので、その内容は自らの行動として納税者が当然熟知しており、これに関する証拠も保持しているから、納税者が必要経費が存在しないとの課税庁の主張を単に争うだけで、必要経費として支出した金額、支払い年月日、支払先、支払った内容について一切具体的な主張をしないときは、公平の観点から、必要経費は存在しないものと推定するのが相当であるとする判例(東京高判平成2年2月28日、租税判例年報2―251)もありますので注意が必要です。 税法の適用及びその運用については、行政庁の通達によってその内容が細かく規定され、それにしたがって行われておりますが、通達は、法律と異なり、国民一般の権利義務を拘束する効力を有しないことにも注意が必要です。 いずれにしても、税務訴訟は、通達行政による課税金額計算の問題が大部分を占めると考えられるから、処分の前提となる資産、債務、経費などの評価と通達との適合性、適法性などが重要な問題となります。 |
2.国税犯則事件 租税に関する犯罪については、その証拠の収集、証拠に対する価値判断に特別の知識と経験を必要とするなどの理由から、国税犯則取締法によって、調査、処分に関する手続が法定されております。 租税犯には、不正行為を用いて租税を免れたり、還付を受けたり、税額の納付を怠ったりする脱税犯と、申告書を提出しなかったり、虚偽の申告書を提出したりする秩序犯に分類されます。 国税に関する犯則事件の調査は、刑事上の告発を目標として行われる手続で、収税官吏に調査権限が認められております。具体的には、収税官吏は、必要に応じて、質問、検査、領置(資料の任意提出を受けることです)を行うことができます(国税犯則取締法1条)。これは、あくまで任意の調査であって、拒否することができます。また、収税官吏は、裁判所ないし裁判官の許可を得て、臨検(所持品、場所等を検証することです)、捜索、差押の手続を執ることができるとされています(国税犯則取締法2条)。これは、強制的な調査で、調査を受ける人の意思に反しても行うことができるとされております。この臨検、捜索、差押については、緊急の場合には、裁判所の許可を得ないでできるとされています(国税犯則取締法3条)。 国税に関する犯則事件(間接国税の場合を除きます)にあっては、収税官吏が調査によって犯則があると思料するときは、告発の手続を執らなければならないとされています(国税犯則取締法12条の2)。告発した場合には、差押物件、領置物件を検察官に引き継ぎます(国税犯則取締法18条)。調査の結果、犯則があると思料するに至らず、他に犯則を調査する手段のないときは、調査終了の処分を行い、差押物件については、返還されます(国税犯則取締法19条)。 |