1.特許、工業所有権法事件
| 1.工業所有権は、知的財産権や無体財産権の一種であり、工業所有権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つがあります。 |
2.このうち、特許権は、「自然法則を利用した技術的思想のうち高度のもの」(特許法2条1項)すなわち「発明」であり、「新規性」(特29条1項)と「進歩性」(特29条2項)がその要件です。新規性がない技術や一般に容易に考えうるものであって進歩性がない発明にまで、独占的な権利である特許権を与えるとすれば、社会の健全な発展を阻害するおそれがあるからです。特許権を登録するためには、願書に明細書と図面を添付して特許庁に提出します。明細書には発明の技術内容の説明、特許請求の範囲(クレーム)を記載します。特許権として認められる権利の範囲はこのクレームの範囲によりますので、ここには、出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要な事項を記載しなければなりません。特許の出願がなされた場合、「出願公告」によって当該発明が社会に開示されることとなります。その後、出願人が審査請求をすれば、審査がなされ(特48条の2)、特許の要件を備えていると判断されれば、出願人に特許料を納付するように通知がされ、これを納付すると原簿に登録されることとなります。特許権は特許出願の日から20年で終了します(特67条1項)。 |
3.これに対し、実用新案権は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」(実用新案法2条1項)すなわち「考案」であり、特許権同様、「新規性」と「進歩性」がその要件とされています。対象となるのは、物品の形状・構造またはこれらの組み合わせに関する考案です(実1条)。実用新案の登録手続は、特許権とほぼ同様です。実用新案権は実用新案登録出願の日から6年で終了します(実15条)。 |
4.他方、意匠権とは、「物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法2条1項)であり、要件として「新規性」や「創作性」が必要とされています(意3条)。意匠登録出願をなすには、意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁に提出します。意匠権の存続期間は設定登録の日から15年で終了します(意21条)。 |
5.また、商標権とは、 「文字、図形、記号もしくは立体的形状もしくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合であって、 @業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用をするもの A業として役務を提供し、または証明する者がその役務について使用をするもの」 とされ(商標法2条1項)、要件として他の商品や役務と区別できる識別力が必要とされています(商標法3条)。商標登録出願をなすには、商標登録を受けようとする商標と商品または役務の区分を指定して特許庁に提出します。存続期間は設定の登録の日から10年ですが、更新登録ができます(商標法19条)。 |
6.上記の工業所有権に対して侵害行為がなされた場合の紛争処理方法は概ね以下のとおりです。 まず、侵害行為を発生したら、早い段階で配達証明付の内容証明郵便で右侵害行為停止の警告を発します。それでも相手方が侵害行為を止めない場合には、裁判所に差止請求を求めることができます(特100条、実27条、意37条、商標36条、不正競争3条)。また、右侵害行為によって生じた損害賠償請求もできます(民709条、特102条、103条、実29条、意39条、40条、商標38条、39条、不正競争4条)。故意・過失の点については、実用新案を除き、損害賠償請求の立証の困難を緩和するために、侵害行為を行った者には過失があったものと推定されています(特103条、意40条、商標39条)し、損害額の立証の困難さを緩和するための損害額の推定規定が設けられています(特102条、実29条、意39条、商標38条)。 具体的な特許訴訟について述べると、例えば、当方の製品が相手方の特許権を侵害しているとして訴訟提起された場合には、当方としては弁護士の他に当該製品分野に詳しい弁理士の協力も得た上で、相手方の主張する特許の内容について特許請求の範囲(クレーム)を詳細に検討する必要があります。そして、当該特許を侵害しているか否かの判断にあたっては、当該特許が、特許請求の範囲(クレーム)に記載された要件を全て満たしたうえで成立していることから、当方の製品がそのうちの1つの要件でも満たしていなければ、特許侵害はないこととなりますので、これを具体的な資料をもって、裁判所に主張することとなります。なお、特許訴訟において、紛争の対象となっている当該製品が、建築物や取引先の注文に応じて生産する商品で取引先等に納入されるもの等で解体等が困難ないしは著しく費用を要する場合には、常に本件のような特許訴訟を念頭に置いたうえで、関係資料(特に図面等)の保管や建築途中での写真撮影などの証拠保全をしておくことが重要でしょう。 |
7.なお、特許や登録がその要件に反してなされた場合には、本来右出願は拒絶されるべきであったことから、法はこれを特許庁の審判によって無効として、原則として遡及的に権利を消滅させることができます(特125条、125条の2、3項、実41条、意49条1項、3項、商標46条の2)。 |