3.監査役の責任
| 1. 委員会等設置会社以外の会社 |
| @ 株式会社の監査役の業務は、取締役の職務の執行を監査することにあります(商法274条@)。監査役と会社の関係も委任契約でありますので、監査役も監査業務の執行には当然に善管注意義務があります。したがって、監査役が任務を怠ったときは会社に対して損害賠償責任を負います(商法277条)。監査役は取締役の職務執行を監査するため、何時でも、取締役、支配人、その他の使用人に対して、営業の報告を求め、会社の業務及び財産の調査をすることができ(商法274条)取締役は会社に著しい損害を及ぼす虞れのある事実を発見したときには、直ちに監査役に報告する義務があります(商法274条の2)。また、監査役には子会社に対しても調査権があり、子会社は正当な理由がない限り、監査役の調査を拒否できませんが(商法274条の3)、これはあくまで親会社の取締役の業務執行を監査するためのものです。 監査役は取締役会に出席し、意見を述べる義務を負っています(商法260条の3第1項)。監査役は、ある取締役が会社の目的の範囲外の行為や法令、定款に違反する行為をなし、またはなす虞れがあると認めるときは、これを取締役会に報告しなければなりません(商法260条の3)。 そして取締役がこのような行為をし、またはする虞れがある場合には、行為の差止を請求することができます(275条の2)。 |
A 監査役の監査対象である取締役の職務執行のうち、会計業務に対するものを会計監査、その他の業務に対するものを業務監査といいます。監査役の監査の内容は、会社の規模によって異なります。 大会社(資本金が5億円以上又は負債総額が200億円以上の会社)においては、会計監査は、まず、会計監査人(監査法人もしくは公認会計士)の監査を受けなければなりませんので、会計監査については、第一次的には会計監査人が行いますので、監査役は、会計監査においては会計監査人の監査を監査することになります。業務監査については、監査役が各自行います。 中会社(資本金が1億円以上5億円未満の会社)では、会計監査人の監査は業務づけられていないので、監査役は会計監査と業務監査の全てを行います。 小会社(資本金が一億円未満の会社)については、監査役は会計監査のみを行います(以上、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律)。しかし、会計監査といっても、取締役の業務に関連してくるので、必ずしも一義的に両監査を区別できるわけでもありません。 なお、大会社の監査報告書に関する規則では、監査役会の監査報告書への記載事項と記載の様式が規定されています(7条監査など)。 |
B 監査役の取締役の業務監査権限は、適法性監査にとどまり、妥当性監査にまでは及ばないとされています。すなわち監査は法令違反のチェックであって、経営判断の妥当性にまでは踏み込まないとされています。しかし、取締役の善管注意義務違反も法令違反(商法254条B、民法644条)になりますので、経営判断の妥当性の問題は、善管注意義務を果たしているか否かの問題と密接に関連しており、適法性と妥当性は明確に区別できない部分もあります。 |
C 監査役の監査は、会社の業務が日常的に適法に行われることを監視し、チェックすることが最も重要であるので、監査役は、取締役会は当然のこと、その他の常務会や経営会議などの重要な会議には出来るだけ出席し、業務上の問題点を常に把握し、情報を得るように努めなければなりません。 取締役は担当業務において、自ら法令遵守義務があることはもちろん、部下に対して法令を遵守させる義務もあり、社内の内部統制がつくられ、それを有効に機能させなくてはなりません。内部統制がつくられ、これらが有効に機能しているかを監視することも、それは監査役の主要な業務です。また、そのほかにも |
| (1)企業の業務内容に関係する各種業法の遵守 |
| (2)独占禁止法の遵守 |
| (3)環境問題 |
| (4)安全衛生 |
| (5)クレーム処理 |
| (6)子会社管理 |
| などは日常的にチェックしていく必要があります。企業のリーガルリスクを回避するために、監査役の責任はますます大きくなっています。 |
| D 大会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は、その就任の前5年間大会社又は子会社の取締役、執行役又は支配人その他の使用人でなかった者でなければなりません(社外監査役 特例法18条1項) 社内出身者ばかりでは、客観的な視点から監査をすることが難しいからです。 また、大会社においては、監査役の互選をもって常勤の監査役を定めなければなりません(同条2項)。 |
| E 監査役は、株主総会で選任されます(商法280条、254条)。監査役は、株主総会において、監査役の選任又は解任につき意見を述べることができます(275条の3)。 大会社において取締役は、監査役の選任に関する議題を株主総会に提出するには、監査役会の同意を得なければなりません(特例法18条3項、3条2項)。 また、監査役会は、その決議をもって、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の会議の目的とすることを請求することができます(特例法18条3項、3条3項)。 会計監査人も、株主総会において選任されます(特例法3条1項)。 会計監査人についても、取締役は、会計監査人の選任及び解任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役会の同意を得なければなりません(特例法3条2項、6条3項)。 また、監査役会は、その決議をもって、取締役に対し、会計監査人の選任及び解任を株主総会の会議の目的とすることを請求することができます(特例法3条3項、6条3項)。 会計監査人は、@職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき、A会計監査人たるにふさわしくない非行があったとき、B心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないときは、監査役会の決議をもって解任することができます(特例法6条の2)。 |
| 2. 委員会等設置会社 |
| @ 委員会等設置会社においては、取締役会及び監査委員会が執行役の業務執行に対する監視・監督機関とされており、当該会社において監査役は認められていません。 監査委員会は、取締役及び執行役の職務の執行の監査及び株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定を行う、委員会等設置会社の必要的機関です(特例法21条の8第2項)。 監査委員会は、取締役3人以上で組織され、その過半数が社外取締役であって委員会等設置会社の執行役でない者でなければなりません(同条第4項)。 また、監査委員会を組織する取締役は、委員会等設置会社若しくはその子会社の執行役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の業務を執行する取締役を兼ねることができないとされています(同条第7項)。 なぜなら、監査委員会の重要な任務の1つは取締役及び執行役の業務執行を監査することですが、上記のような場合には、監査をする人とされる人が同じになったり、指揮命令に服する者が指揮命令権者を監査することになり、監査の実行性が図れなくなるからです。 |
| A 監査委員会が指名する監査委員は、いつでも、他の取締役、執行役及び支配人その他の使用人に対してその職務の執行に関する事項の報告を求め、又は委員会等設置会社の業務及び財産の状況を調査することができます。(同法21条の10第1項)。 また、監査委員会が指名する監査委員は、監査委員会の権限を行使するために必要があるときは、子会社若しくは連結子会社に対して営業の報告を求め、又は子会社若しくは連結子会社の業務及び財産の状況を調査することができます(同条第2項)。 ただし、子会社もしくは連結子会社は、正当な理由がある場合には、報告又は調査を拒むことができます(同条第2項、商法274条の3第2項)。 |
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B 監査委員は、執行役が委員会等設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあると認めるときは、取締役会において、その旨を報告しなければなりません(特例法21条の10第4項)。 |
| C 監査委員が、監査委員会の監査報告書に記載すべき重要な事項につき虚偽の記載をし、又は監査委員会において当該記載のある監査報告書の承認の決議に賛成したときは、当該監査委員は、当該記載をし、又は当該賛成をするについて注意を怠らなかったことを証明した場合を除き、これにより第三者に生じた損害を賠償する義務を負います(同法21条の22第2項)。 |