2.金融商品、不動産小口化投資などの投資をめぐる事件

 1980年代後半、バブル経済を背景にして、株価や不動産が高騰し、金融商品も多様化され、例えば、ワラント債、変額保険、不動産小口化投資(国内・海外)、金融・商品ファンド、商品ファンドなど種々の金融商品が企画・販売されました。
 そして、販売の対象は、機関投資家や投資の専門家だけでなく、主婦や老人、中小企業の経営者からサラリーマンなど、幅広く金融商品が販売されていきました。
 この時期、投資に関する専門知識が無い者も、投資商品・金融商品を購入して行き、販売時の説明では、商品の内容を十分に理解しないで商品を購入してしまった者や、営業担当者から投資メリットだけが強調された説明を受けて商品を購入したものの、現実には当初の説明と異なる結果(予想収益が上がらなかったり、元本割れをしたりといった結果)が発生し、商品購入者が、当初の説明と異なって多大な損害を被るというケースが数多く生じています。


1.
金融商品販売における販売者の説明義務
 法律は、購入者を保護する見地から、金融商品を販売する者に対して、販売勧誘について、契約判断に影響する重要事項についての説明義務を規定し、利益を生じるとの断定的判断の提供を禁止しております(金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)、消費者契約法、不動産特定共同事業法、証券取引法、商品取引所法、金融先物取引法、商品投資に係る事業の規制に関する法律(商品ファンド法)など)。
 金融商品など、専門的な知識を必要とする商品の販売については、販売者が専門業者であるのに対して、購入者は、単なる消費者であって、必ずしも専門的な知識がなく、取引当事者間に、知識及び情報収集能力の格差が大きく、取引に関する情報が、販売者側に偏在しているのが通常であります。そこで、購入者が自己責任の原則に基づく合理的判断を行うためには、販売者の側から、情報提供を義務付け、購入者を誤信させるような虚偽の情報、断定的判断の提供を禁止する必要があり、商品の内容、危険性、対処策等を十分に説明して理解を得るべき信義則(民法1条)上の義務を負うと解されます(大阪地判昭和62.1.29金法1149―44)。


2.
説明義務違反・断定的判断提供の効果
 まず、販売者の説明義務違反行為によって、購入者の商品認識に錯誤(事実と認識の不一致)が生じた場合には、契約の無効を主張することができます(民法95条)。又、販売者が購入者の錯誤を意図的に生じさせるために欺罔行為を行ったような場合には、詐欺(刑法上の詐欺とは異なります)によって、契約は取消すことができます(民法96条)。
 例えば、変額保険の事例では、保険会社の社員が、相続税対策に苦慮していた老人に対し、実際には、株式市況等による運用利回りが低下すれば、解約返戻金が支払い保険料の元本を割ることもある危険性の高い商品であったにもかかわらず、「当社は運用のプロが揃っている一流企業であるから、任せてもらえば絶対に9%の利回りは大丈夫である。運用実績4.5%のパンフレットの記載例は大蔵省の指導で書いただけで、このような事態は現実には絶対に有り得ない」などと虚偽の事実を述べ、損害を与えたという事案で、契約の錯誤無効、損害賠償を認めた裁判例が存在します(東京地判平成6.5.30金法1390―39)。
 次に、販売者の説明義務違反は、購入者との関係では、契約上(信義則上)の義務に違反しているという関係にありますので、債務不履行として、契約解除及び損害賠償の請求を行うことができます(民法415条、543条)。  さらに、説明義務違反等の行為に違法性があり、販売者に故意・過失があるときは、不法行為として、損害賠償の請求をすることができます(民法709条)。

3.
金融商品販売法によって、金融商品販売業者等は、金融商品の販売等を業として行おうとするときは、当該金融商品の販売等に係る金融商品の販売が行われるまでの間に、顧客に対し、元本欠損が生ずるおそれなどの重要事項について、説明をしなければならないとされております(金融商品販売法3条)。そして、この重要事項について説明をしなかったときは、販売業者は、これによって生じた顧客の損害を賠償する責めに任ぜられますが(金融商品販売法4条)、顧客が損害の賠償を請求する場合には、元本欠損額は、金融商品販売業者等が重要事項について説明をしなかったことによって当該顧客に生じた損害の額と推定されています(金融商品販売法5条)。

金融商品を販売する企業としては、顧客に対して、金融商品のもつリスクについて、十分な説明を為す必要があり、パンフレットの説明内容や営業担当者の説明について十分注意を払う必要があります。特に、金融商品の販売については、いわゆる「適合性の原則」(そもそも顧客が購入するに適した商品でないものを販売してはならず、顧客に対する適合性を保持すべきとする原則。例えば、資力もない人にリスクの大きい商品を勧誘してはならないことなど。)から、当該商品が顧客に適合しているか否かについて十分調査する必要があり、顧客に対して十分な説明をする前提として、顧客の資力や判断力等を十分に調査する必要があります。
 他方、顧客、消費者からは、事業者、販売業者に対して、商品の内容について十分な説明を求め、商品の内容、特にリスクの内容について十分理解した上で商品購入を判断するよう、注意が必要であります。販売者に説明義務違反による損害賠償義務が認められたとしても、その損害発生について顧客の側に過失があれば、過失相殺の適用によって、賠償額は減額されることになります(民法418条、722条)。